2007年春闘方針(目次)

はじめに

1. 情勢

(1)憲法改悪〜戦争のできる国づくり
(2)教育基本法改悪〜国のための「人づくり」
(3)進む「弱肉強食」の「格差社会」

2. おもな課題と要求

(1)労働者の生活・権利を守る要求
(2)国民生活を守る要求
(3)平和と民主主義を守る要求

3. たたかいのすすめ方

(1) 賃金引上げと全国一律最賃制の実現をめざすとりくみ
(2) 官民の共同のとりくみ
(3) リストラ反対・争議支援、「働くルールの確立」をめざすとりくみ
(4) 年金改悪法の見直し、消費税・サラリーマン増税に反対するとりくみ
(5)じん肺根絶、東京大気汚染公害裁判闘争勝利めざすとりくみ
(6) 憲法改悪を阻止し、核兵器廃絶、平和を守るとりくみ
(7) 千代田総行動のとりくみ
(8) 組織強化のとりくみ
(9) 教宣活動
(10) 共闘の強化

4. 春闘共闘の組織と運営

(1)組織方針
(2)結集を強めるオルグ活動
(3)組織の運営

5. 春闘共闘の財政



はじめに


 今、戦後最長の「いざなぎ景気」を超える景気拡大と言われていますが、全く実感はありません。
賃金が増えないことが最大の要因です。大手企業は、バブル期以後空前の営業利益を計上していますが、
これは、合理化という名の下に大量のリストラ策を講じ、賃金の高い一般社員を低賃金のパート社員に置き換え、
総人件費を抑制しているからです。中小企業や非正規雇用者を犠牲にし、ワーキングプアーの激増など格差社会はますます広がるばかりです。
2006年9月に新しく誕生した安倍政権は、小泉政権での構造改革・規制緩和による賃金・雇用破壊をそのまま引き継ごうと、労働法制の見直しを急ピッチで進めています。多様化するホワイトカラーの働き方、非正規雇用者の増大、組織率が20%を割り込んだ労働組合といった時代の流れの変化の中で、政府・財界が一体となって進めようとしているのは、労働コストを削減し、国際競争に勝ち残れる一部大手企業の収益力向上が目的で、大多数の勤労者、国民の側に立ったものではありません。ホワイトカラーエグゼンプション制度を導入すれば残業代の手当てが無くなり、これまで大企業はじめ多くの企業が行っていた「不払い残業」の実態が合法化されようというものです。また、大手製造企業を中心に「偽装請負」という違法な雇用形態も次々に明るみになっています。
 さて、年金・医療など社会保障も年々改悪され雇用や生活不安を抱える国民をよそに、安倍首相は、憲法を改悪し「日本を再び戦争のできる国」にしようとしています。その危険な流れとして「教育基本法」を変え、「国民投票法案」、「共謀罪法案」を新設しようとしていますが、そんなことをしていったいどんな「美しい国」をつくるのでしょうか。イラク戦争を仕掛けた共和党ブッシュ大統領は、先の中間選挙で上院、下院とも民主党に過半数を取られる敗北をしました。あの無法な戦争にアメリカ国民が審判を下したということです。
2007年は都知事選挙、一斉地方選挙、参議院選挙の年です。憲法改悪を許さず、いのちと平和を守るための政治の流れを大きく変えていきましょう。  

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1. 情勢

(1)憲法改悪〜戦争のできる国づくり

 対米・財界追随を強め、「官から民へ」「国から地方へ」など「小さな政府」への「構造改革」を推し進めてきた小泉内閣を継いで、9月に安倍晋三内閣が誕生しました。
 国会冒頭に行われた「所信表明」では、「美しい国」が謳い文句となりましたが、内容はまったく空疎なものでした。しかし、安倍内閣の目指す「美しい国」とは、過去の歴史への無反省を前提とし、感傷的な戦前回帰にとどまるだけではなく、新自由主義と新国家主義を貫こうとする、きわめて危険な方向性であることは明らかになっています。
 まず、憲法に関して「新たな国づくりに向けて、歩み出すときがやってきた」とし、改憲スケジュールを具体的に政治日程に載せ、第一歩である「国民投票法案」の早期成立を図ろうとしています。現行憲法を「日本が占領されている時代に制定されたもの」とし、戦後政治を否定する立場に立つものです。
 同時に、日米同盟をより効果的に機能させるために、「憲法で禁止されている集団的自衛権の行使について個別具体的な例に即し、よく研究していく」と述べ、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使を解釈変更で可能にする意向を打ち出しています。具体的には、公海上での米艦船援護やイラクなどでの他国軍援護が想定されており、アメリカとともに、世界のあらゆる地域での戦争に荷担していこうとするものです。そのために、すでに沖縄をはじめとする米軍基地の再編が進められ、日米安全保障協議委員会(2プラス2)における最終報告(「再編実施のための日米のロードマップ」)では、2014年を目途に再編計画を完了、グアムへの在沖縄海兵隊「移転」など、3兆円を超える再編費用の大半を日本が負担することで合意しています。
 同時に、安倍首相は防衛庁を「省」昇格関連法案を今国会で成立させましたが、これは、国際平和協力活動等を自衛隊の「本来任務」とし、自衛隊の海外派兵を推し進めるものにほかなりません。
 また、北朝鮮の核実験に際して、日本における「核保有論議」を認める麻生太郎外相や中川昭一自民党政調会長の発言が国際世論の批判を受けていますが、安倍首相は実質的に容認しています。
 これらの「戦争への道」への反対勢力に対しては、「共謀罪法案」によって徹底的な押さえ込みを図ろうとしています。

(2)教育基本法改悪〜国のための「人づくり」

 一方、安倍首相が「美しい国、日本」を実現するために不可欠としているものが「教育改革」であり、教育基本法の改悪を最優先課題と位置づけています。現行の教育基本法は教育の目的を「人格の完成」と定め、1人ひとりの子どもの成長を第一に考え、その人格の完成を目的にすえるものです。しかし、政府の教育基本法改悪案は、「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくること」という観点に立つもので、個人の尊厳・人権・権利よりも国・政府の権限を優先し、家庭教育や幼児期の教育、小・中・高の教育、大学教育、社会教育を含めて、すべての教育および教師を政府の支配・統制下に置こうとしています。戦前のような国家のための「人づくり」をねらうものです。最も端的なものが、「教育の目標」の1つとして「我が国を愛する態度」を挙げた「愛国条項」です。安倍首相のブレーンである「新しい歴史教科書をつくる会」元会長・八木秀次(高崎経済大教授)氏の影響も見逃せません。
 これまでに、「タウンミーティング」で、文科省が教育基本法の改悪に賛成する発言をさせていた事実、公聴会で出された反対意見には一切耳を傾けず、衆議院で強行採決を行った事実など、教育を議論する姿勢に真っ向から反する非民主主義的な経緯が明らかになっています。
 同時に、首相直轄の諮問機関である教育再生会議においては、教員免許更新制や学校評価制、親や生徒が学校を選択できる教育バウチャー制度などが議論される予定ですが、これらのねらいが学校の再編・淘汰によって教育の現場に選別と競争主義を持ち込むとともに、学校への管理・統制を強化し、意に沿わない教員を締め出すことにあることは明らかです。 来年1月に中間報告が示される予定です。

(3)進む「弱肉強食」の「格差社会」

 経済政策では「オープン」と「イノベーション(技術革新)」を進めるとしています。これは、「イノベーション」を継続できるシステムを「税制や財政、教育などすべての施策を動員して整備していく必要がある」(御手洗冨士夫日本経団連会長)とする財界・大企業の要請に基づくものです。
 同時に「再チャレンジ支援策」を「重要課題」と位置づけていますが、非正規雇用の増大や中小企業の倒産等を引き起こしてきた規制緩和の実態には目を向けようとしません。 
 現実に、生活保護水準以下で暮らす家庭は、日本の全世帯のおよそ10分の1、400万世帯以上と言われています。また、正規雇用の道を閉ざされ、働いているのに生活保護水準以下の暮らししかできない「ワーキングプア」は700万世帯以上と推定されています。
 一方、医療費や介護保険の負担増に加え、最近では「障害者自立支援法」によって高額な利用料を払えず、数千人の利用者が退所を余儀なくされるなど、社会保障の削減が進められるなか、安倍首相は「再チャレンジ支援」は「弱者を保護することではない」と公言しています。中小企業者や高齢者・障害者等は「自立」の名の下に切り捨てようとしているわけです。
 いまや、憲法25条が保障する「人間らしく生きる最低限の権利」の土台が突き崩されているのです。このような「弱肉強食」の「格差社会」を生み出してきた「構造改革」を依然として推し進めながらの「再チャレンジ支援」など、お題目にすぎないことは明らかです。
 このようななか、来年度には税制「改正」によって、初年度だけで6千億円規模の法人税大幅減税に踏み切る意向です。このような大企業優遇の法人税減税の財源については、郵政民営化に続き、「公務員の総人件費削減」、国から地方への財政支出を減らす「三位一体改革」、医療費抑制のため政府目標、公共サービスを民間に開放する「市場化テスト」の本格導入、政府金融機関の統廃合などによって賄おうとするものです。特に、公務員制度の「改革」によって、大幅な人件費を絞り出そうとしていることは明白です。
 さらに、消費税増税問題についても、来年秋以降に議論を本格化させるとしています。
 

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2. おもな課題と要求

(1)労働者の生活・権利を守る要求

@ 賃下げ許さず、賃金の底上げと、成果主義賃金導入に反対し、誰もが生活できる賃金を。
A パート、臨時、アルバイト、派遣など、有期雇用労働者等の均等待遇。
  「誰でも時給1,000円以上、日額7,400円以上、月額150,000円以上」の賃金を。
B 全国一律最低賃金制の確立。産業別最低賃金の確立。
  企業内最賃・地域最低賃金の大幅引き上げ。公契約条例制定。
C リストラ・首切り反対、雇用の確保と拡大。希望者全員の定年延長・雇用継続。解雇規制法・労働者保護法の制定。
D 労働時間短縮、週40時間・完全週休2日制の即時実施。残業時間の規制と割増率の引き上げ、サービス残業の根絶。
E 労働者保護法制を骨抜きにしリストラ・「合理化」をすすめる「労働契約法制」反対。
  ホワイトカラー・エグゼンプションの導入反対。実効ある男女平等法を。
F 「公務員制度改革大綱」の撤回。公務リストラ反対。公務員労働者の労働基本権の回復。
G 1047名の解雇撤回・国鉄闘争をはじめとするすべての争議の勝利。
 

(2)国民生活を守る要求

@ 国民生活無視の「構造改革・規制緩和」反対。
A 年金改悪の見直し。最低保障年金制度の確立。混合診療導入反対。 医療・介護など社会保障の拡充。
B 消費税の大増税反対。所得税・住民税の定率減税廃止反対 
C 義務教育費国庫負担廃止など教育、医療、福祉を破壊する三位一体改革反対
D 郵政民営化反対、国民の共有財産を守ろう 
E 「不良債権早期最終処理」反対、銀行の貸し渋り・貸し剥がしを許すな。 銀行への税金投入反対。中小企業を守れ。
F 食糧主権の確立。食の安全確保。コメ・農産物の全面自由化反対。食糧の自給率向上。
G 石原都政の福祉切り捨て反対、都民生活を守ろう。
H 保育園、児童館などの民営化をすすめる千代田構造改革反対。
I 大気汚染・じん肺・アスベスト・薬害イレッサなどの被害者の救済。公害・職業病、薬害の根絶。

(3)平和と民主主義を守る要求

@ 憲法改悪阻止、自公民による憲法改悪を目的とする国民投票法案反対。
A 教育基本法改悪反対、日の丸・君が代の強制反対。30人学級などゆきとどいた教育の実現と私学助成の拡充を。
B イラクから自衛隊の全面撤退を。米英軍はイラク占領を止め、国連中心の復興を。
C 国公法弾圧・ビラ撒き弾圧などを許さず、言論と表現の自由を守ろう。
D 企業・団体献金反対、小選挙区制・政党助成法の廃止。民意を反映する選挙制度改革を。
E 侵略戦争の責任を明確にし、戦争被害者への国家補償を。
F 核兵器の廃絶。米軍基地撤去。日米安保条約破棄。自衛隊の海外派兵反対。
G 共謀罪法案の成立阻止。

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3. たたかいのすすめ方

(1)賃金引き上げと、全国一律最賃制の実現をめざすとりくみ

 賃金引き上げをめざし、「賃金要求相互支持共同行動追及運動」をすすめます。
 また、ビクトリーマップの宣伝など大企業労働者、未組織労働者を激励する宣伝行動を行います。

@ 賃金底上げをめざし、パート・有期雇用労働者等の均等待遇、「時給1,000円以上、日額7,400円以上、
  月額150,000円以上」、企業内最賃の確立と引き上げ、地域最賃の引き上げ、全国一律最低賃金制の実現めざし
  とりくみを進めます。
A ナショナル・ミニマムの軸としての全国一律最低賃金制の法制化めざし、学習、宣伝、署名、政府各省庁、
  区・区議会への要請行動などにとりくみます。
  また、官民交流会など官民共同行動、国民各階層など他団体との共同行動を追及します。
B 公契約条例制定のとりくみをすすめます。

(2)官民の共同の取り組み
 
 小泉前自公政権は、「小さな政府」「官から民へ」の名の下で国民負担増と格差社会の拡大を進めてきましたが、
安倍内閣も国民サービス切り捨て、弱者切り捨ての政策を強めています。50年ぶりと言われる給与制度の大改悪で
「査定昇給の導入」、不透明な職員評価制度の導入など勤務条件の改悪によって、物言わぬ公務員作りをめざしています。
公務員制度改革は民間における就業規則や労働条件に大きな影響を与えます。これまで進めてきた官民交流会、
官民の共同行動をさらに強化し、相互理解と連帯、共闘を発展させます。

(3)リストラ反対、争議支援、「働くルールの確立」めざすとりくみ

 生活権・生存権を奪うリストラを許さず、雇用を守っていくたたかいに全力を上げとりくみます。
解雇・差別でたたかっている争議の一日も早い勝利めざし、とりくみを強めます。
また、整理解雇4要件の法制化を含む解雇規制法の実現にむけ宣伝、署名、政府への要請などにとりくみます。
サービス残業をなくし、時短を進めて雇用の拡大を図り、人間らしい生活を営むために長時間労働をなくすことが
急務となっています。
これらについても共同闘争にとりくんでいきます。
労働組合の存在と機能を否定し、リストラ・「合理化」をすすめる「労働法制」の改悪を許さない運動を強めていきます。

(4)年金改悪法の見直し、消費税・サラリーマン増税に反対するとりくみ

 消費税増税や介護保険料徴収対象の拡大、混合診療導入など介護・医療な改悪が行われようとしています。
春闘共闘として、「消費税をなくす千代田の会」、「千代田社保協」とともに学習、署名活動と、政府、
区議会への要請などにとりくみます。消費税増税反対駅頭宣伝行動を毎月行っていきます。

 (5)じん肺根絶、東京大気汚染公害
  裁判闘争勝利めざすとりくみ

 被害者の救済、じん肺の根絶をめざし「じん肺東京支援連」と連帯してとりくみを進めます。
患者の救済など東京にきれいな空気を取り戻すため、「東京大気汚染公害裁判・勝利めざす実行委員会」
とともにとりくみを進めます。

(6)憲法改悪を阻止し、核兵器廃絶、平和を守るとりくみ

 一昨年、大江健三郎氏、井上ひさし氏など著名人9氏によって結成された憲法改悪に反対する「9条の会」は
その後、全国の職場、地域、学園に草の根の組織としてひろまりましたが、千代田でもさらにこの
アピール賛同署名へのとりくみ、職場での「9条の会」の結成など職場に憲法の風を吹かせるための
運動を進めていきます。
今国会で教育基本法の改悪が強行されましたが、この間の反対運動の広がりをもとに教育問題について
新たな取り組みを進めていきます。
今年、被爆62周年をむかえ核兵器廃絶めざし、69行動の駅頭宣伝を1年間通して行っていきます。
また、16回目を迎える千代田平和集会にとりくみます。

(7)千代田総行動のとりくみ

 春闘・秋闘によるたたかいの山場において3月と4月、そして11月に、要求を結集して千代田総行動を行います。
 
(8)組織強化のとりくみ

 国民春闘路線を発展させる立場から、未組織労働者や地域組織未加盟労組に対するする働きかけを強め、
駅頭宣伝、労組訪問などをおこない組織化をすすめていきます。

(9)教宣活動
  
春闘要求、回答状況など知らせる春闘情報の発行や、それぞれの課題についての宣伝行動を行います。
 
 (10)共闘の強化

区内地域産別組織、民主団体との連携を強め共同行動を発展させるとともに、
東京春闘共闘や国民春闘共闘とも連携し、それぞれの提起する共同行動にとりくみます。

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4. 春闘共闘の組織と運営

(1) 組織方針

区内すべての労働組合(産業別地域組織を含む)に加盟を呼びかけ、
賛同を得た労働組合をもって「千代田区春闘共闘委員会」(略称:千代田春闘共闘)を構成します。

(2) 結集を強めるオルグ活動

 区内の労働者と労働組合の多数が千代田春闘共闘への参加を実現できるようにするため、
 春闘前段の早い時期にオルグ活動を行います。 

(3) 組織の運営
             
@ 単組代表者会議 
 単組代表者会議を開催し、とりくみについて協議・決定していきます。
 
A 幹事会 
 執行機関として幹事会をおきます。幹事会は千田区労協常任幹事会と千代田区労連幹事会、
 各産業別地域組織と千代田争議団の代表をもって構成します。

B ブロック組織
 4つのブロックごとにブロック春闘共闘を設け、その運営は千代田春闘共闘に準じます。
  
C 事務局
 千代田区労働組合協議会の事務所(千代田区神田神保町3-2サンライトビル7階?3264-2905、Fax3264-2906)におきます。

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5. 春闘共闘の財政

   財政は千代田区労協の財政および春闘共闘に加盟の参加費を充当します。            
   参加費(1回限り)の徴収基準は次の通りです。
    50人未満  3,000円
    100人未満  4,000円
    200人未満  5,000円
    500人未満  6,000円
  1,000人未満  7,000円
  1,000人以上 10,000円
 地域産別組織は10,000円

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